彼は雲霧一味でも火付盗賊改方でもありませんが、物語にしばしば関わってきます。
特に前半では重要な役割が多いですね。
関口雄介は、小梅村、現在の江東区亀戸一丁目の辺りに剣術道場を開いています。
一刀流の師範であります。
その稽古は激しいらしく、やめてしまう門人も多いようで
門下生は15人足らずしかいないということです。
それだけに、道場に残っている門下生は、
残っているというだけでつわものと考えられます。
その中に、盗賊改方長官安部式部の甥や、また改方の同心高瀬俵太郎らがいます。
さすがに剣術の先生ですから、
物語中では単純な戦闘力は最も高いのではないでしょうか。
おそらくもういい年の仁左衛門よりも強いのではないかと思われます。
少なくとも純粋に剣の腕で争えばそうなるでしょう。
ただ、仁左衛門に戦術を練られてしまうと
たとえ一対一でも勝てないでしょうけど。
関口先生は随所でその強さを見せ付けています。
駒寺の利吉という足手まといをかかえつつも、
因果小僧六之助とその手下たちをあっさり片付けて利吉を救出してしまいますし、
いとこの鈴木又七郎に頼まれて幕府の隠密と闘った時も
危なげなく勝利しています。
ただ、その剣の腕で立身出世を図ろうとはしていないようです。
物欲や名利とはまったく無縁の半生を送ってきた関口雄介なのである。
ただ一つ。剣をまなぶことによって、人間の肉体と精神のつながりと、
そのつながりがどこまで高揚するものなのか、
「それを門人たちと共に、きわめていきたい」
さて、かくのごとき純粋剣士関口雄介なのでありますが、
人情に厚いところもあります。
見ず知らずの、恐らくは堅気の者ではない利吉を
六之助らの手から救い、なおかつかくまってやり、最期も見取ってやります。
遺言まで聞いてやっているのであります。
雄介は利吉の冷たい左手をつかみ、これを、わが両手の掌にあたたかくつつみ、
ゆっくりともみほぐしてやりながら、
「こころ残りのことがあるなら、いうてみよ」と、いった。
涙ぐんだことなど利吉にとっては何年ぶりのことだったろう。
(こ、こんなことを、してもらったおぼえは、これまでにねえ)
関口雄介は利吉の遺言を果たしてやり、さらにこれが六之助捕縛につながります。
魅力的な人物である関口先生ですが、
物語後半ではあんまり顔を出してくれんのですよ。
クライマックスの前にちょっと出てきて政蔵さんを助けるくらいです。